FIIOのエントリーDAP「JM21」シリーズに、JM21 2026年モデルが追加されました。本モデルは、従来の JM21(2025年モデル) をベースに、メモリ・ストレージ・バッテリー容量を増量したマイナーチェンジ版という位置づけです。
具体的には、メモリは従来比1GB増の4GB、内蔵ストレージは2倍の64GB、バッテリー容量は約29%増となる3,100mAhへと拡張されています。一方で、DAC構成やアンプ回路、出力仕様、OS設計などの音質や基本性能に関わる部分は変更されていません。
本記事では、JM21 2026とJM21(2025)の実際に違うポイントだけを整理し、それらの変更が操作性や使い勝手にどのような影響を与えるのかを専門的な視点で解説します。音質面の評価や「どちらがおすすめか」といった判断については扱わず、仕様差と体感への影響を正確に把握するための比較記事としてまとめています。
本記事は、すでにJM21(2025年モデル)の仕様や立ち位置を把握しているユーザーが、2026年モデルへの更新価値を冷静に判断するための資料として構成しています。なお、2025年モデルの基礎的な仕様については、こちらの解説記事も併せて参照してください。
JM21 2026とJM21(2025)の違いはどこか
まず前提として、この2モデルの関係性は「中身の全面刷新」ではなく「リソースの増強」です。
結論:違いは「容量まわりのみ」
JM21 2026におけるアップデート箇所は、以下の3点に集約されます。
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システムメモリ(RAM):3GB → 4GB(+1GB)
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内蔵ストレージ(ROM):32GB → 64GB(2倍)
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バッテリー容量:2,400mAh → 3,100mAh(約29%増)
これら以外の主要パーツ、すなわち回路・音質設計に関わる変更は一切ありません。音の心臓部であるDACチップや増幅を行うアンプ回路は同一のものが採用されています。
比較表:変更点と共通点一覧
| 項目 | JM21 2026 | JM21 (2025) | 判定 |
| メモリ (RAM) | 4GB | 3GB | 増量 |
| ストレージ (ROM) | 64GB | 32GB | 増量 |
| バッテリー容量 | 3,100mAh | 2,400mAh | 増量 |
| 再生時間 (SE) | 最大16時間 | 最大12.5時間 | 強化 |
| DACチップ | CS43198 ×2 | CS43198 ×2 | 共通 |
| アンプ構成 | フルバランス設計 | フルバランス設計 | 共通 |
| 出力端子 | 3.5mm / 4.4mm | 3.5mm / 4.4mm | 共通 |
| SoC (プロセッサ) | Snapdragon 680 | Snapdragon 680 | 共通 |
| OS | Android 13 | Android 13 | 共通 |
| サイズ / 重量 | 約120.7×68×13mm / 156g | 共通 | 共通 |
メモリ増量(3GB → 4GB)の影響
Android OSを搭載するDAPにおいて、メモリ(RAM)の容量は操作感の「余裕」に直結します。
Android動作への影響
JM21シリーズが採用しているAndroid 13は、オーディオ特化のカスタマイズが施されているとはいえ、OS自体が一定のリソースを消費します。
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アプリ切り替え:メモリが4GBに増えたことで、Apple MusicやTidalといった音楽ストリーミングアプリと、設定画面やブラウザを往復する際の「もたつき」が軽減されます。
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バックグラウンド保持数:3GB環境では、複数のアプリを立ち上げるとバックグラウンドのアプリが強制終了(キル)されやすかったのに対し、4GBではより多くのプロセスを維持できるため、再起動を待つストレスが減少します。
ストリーミング再生時の安定性
これは音質が良くなるという意味ではなく、「再生が途切れるリスクを減らす」という安定性の話です。特に高音質なロスレス・ハイレゾストリーミングを行う際は、バッファリングやデータ処理にメモリを消費します。システム全体の空きメモリが増えることで、高負荷時でも安定したデコード処理を継続しやすくなるのが4GB化のメリットです。
ストレージ増量(32GB → 64GB)の意味
内蔵ストレージ(ROM)が2倍になったことは、特にアプリを多用するユーザーにとって大きな意味を持ちます。
本体保存派ユーザーへの影響
32GBモデル(2025)の場合、システム領域を除くとユーザーが自由に使える容量は20GB程度まで制限されていました。64GBモデル(2026)では、システム占有分を差し引いても約52GB程度の空き容量が確保されます。
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ハイレゾ音源保存可能数の目安:
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24bit/96kHz(アルバム1枚 約1.5GB)換算で、約13枚分(32GB)から約34枚分(64GB)へと拡大します。
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お気に入りの「これだけは外せない」という音源を、microSDを介さず本体側に余裕を持ってストックできるようになります。
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microSD併用時の実用差
もちろん、数TBのライブラリを持つユーザーはmicroSDカードをメインに使用することに変わりありません。しかし、オフライン再生用に音楽ストリーミングアプリ内でダウンロード保存を行う場合、保存先が「本体内蔵ストレージ限定」に制限されるアプリや設定も存在します。内蔵容量が64GBあれば、高音質設定でのオフライン保存にもある程度の余裕が生まれます。
バッテリー増量(約29%増)の実用効果
物理的なバッテリーサイズが拡張されたことで、連続再生時間が目に見えて向上しています。
公称スペック上の違い
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JM21 (2025):2,400mAh(シングルエンド最大 12.5時間 / バランス最大 9.5時間)
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JM21 2026:3,100mAh(シングルエンド最大 16時間 / バランス最大 12.5時間)
公称値ベースで、バランス接続時の再生時間が2025年モデルのアンバランス接続時に匹敵するレベルまで伸びています。
実使用での体感ポイント
ストリーミング再生時はWi-Fi通信が発生するため、ローカル再生よりもバッテリーを激しく消費します。2025年モデルではバランス接続でストリーミングを続けると「一日はもつが、夜には不安になる」といった場面があり得ましたが、2026年モデルでは余力が生まれたことで、より長時間の外出でもバッテリーを意識せずに使用できるシーンが増えます。また、待機時の消費電力についても、物理容量の増加により長期的な「電池持ち」の印象が改善されています。
音質・再生性能は変わるのか
ここが最も重要な点ですが、再生される「音」そのもののスペックは同一です。
DAC・アンプ構成は共通
どちらのモデルも、シーラス・ロジック社のフラッグシップ級DACチップ「CS43198」をデュアル(2基)搭載しています。また、バランス出力で最大700mW(32Ω負荷時)という、エントリークラスとしては異例のハイパワーを実現するアンプ回路も引き継がれています。
音質差が出ない理由
オーディオプレーヤーにおいて音質に変化が出るのは、主に「DACチップの変更」「アンプ回路の刷新」「電源回路のノイズ対策強化」などが行われた場合です。JM21 2026はこれらを意図的に変更せず、実績のあるJM21の回路をそのまま流用しています。したがって、「新モデルの方が音がクリアになった」あるいは「低域が力強くなった」といった音質傾向の変化は、設計上は想定されていません。
価格差(約1万円)をどう見るか
スペック強化に伴い、市場想定価格もスライドしています。
実売価格の整理
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JM21 2026:約39,600円(税込)
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JM21 2025:約29,700円(税込)※発売当時
実売ベースで約1万円の開きがあります。
価格差1万円で増えたもの
この差額は、以下のパッケージ代金と捉えることができます。
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メモリ 1GB分の動作マージン
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内蔵ストレージ 32GB分の物理的な追加
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バッテリー 700mAh分の駆動時間の延長
DAPのコンポーネントにおいて、特にメモリとバッテリーの増強は製造コストに直結するため、単純な「値上げ」というよりは「スペック相応のランクアップ」という見方が適切です。価格差に対する妥当性の判断は、使用スタイルや運用年数によって変わるため、本記事では数値的な差分整理にとどめます。
どんな用途で差を感じやすいか(事実整理)
用途によって、これら「余裕」の恩恵を受けられるかどうかが分かれます。
ストリーミング中心の使い方
SpotifyやApple Musicなど、OS上で複数のタスクを走らせる使い方では、JM21 2026のメモリ4GBの恩恵を最も強く感じます。アプリの立ち上がりや検索時の挙動など、トータルでのストレス耐性が高まります。
本体保存・長時間利用
microSDカードを抜き差しせず、決まった楽曲を本体に入れて持ち運びたい、あるいは一回の充電でできるだけ長く音楽を聴き続けたい場合、JM21 2026のストレージ増量とバッテリー増量のメリットが直接現れます。
再生専用DAPとしての使い方
逆に、一度音楽を再生したら画面はほとんど操作せず、ローカルの音源を淡々と流し続けるような「ピュアミュージックモード」主体の運用であれば、2025年モデルとの操作感の差は最小限に留まります。
まとめ|JM21 2026は「性能向上」ではなく「余裕の拡張」
FIIO JM21 2026は、2025年モデルで確立された優れた音質設計はそのままに、スマートデバイスとしての基礎体力を底上げしたモデルです。
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音質・再生能力は同一:DAC、アンプ、出力値などは2025年モデルと完全に共通です。
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操作・容量・バッテリーの余裕が増したモデル:メモリ、ストレージ、バッテリーという「使い勝手」に関わる三要素が強化されています。
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性格は完全に同系統:出力の強さとコンパクトな筐体を両立した「エントリー・ハイパワーDAP」としてのアイデンティティは変わりません。
今回のマイナーチェンジは、Android DAPとしての「実用寿命」を延ばすためのアップデートと言えます。音質面での詳細なレビューや、ポータブル環境での駆動力については、引き続きJM21 2025年モデルの解説ページも参考に、検討材料を整理してください。


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